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ハリや竿には魚の名前を冠した商品があります。チヌバリ、グレバリ、そしてチヌ竿、グレ竿などです。ハゲバリ、ウナギバリなんかは習性に完全に特化していて、これでないと掛けづらいという現実があります。ま、ハリの話はともかく、ここでのテーマは竿です。釣り方に特化した投げ竿、落とし込み竿、イカダ竿は別にして、同じ磯竿なのにグレ竿、チヌがあります。おそらく、ビギナーの皆さんは、チヌ釣りをするならチヌ竿を使わなければいけないと思ってしまうでしょう。そこで、チヌ竿以外では都合が悪いのか、それはどうしてなのかを考えてみたいと思います。
チヌ竿とはどんな竿?
最初に、チヌ竿とほかの竿との違いを見てみましょう。大きな特徴はふたつあります。軟らかいのと胴調子だということです。軟らかいというのは反発力が弱く、小さな荷重で大きく曲がるという意味です。一方、胴調子とは、荷重を掛けたときどこから曲がるかということです。胴調子の対義語は先調子ですが、ビギナーの皆さんは先調子、胴調子というのは非常に分かりにくいと思います。実際に両者を持って、例えば1号オモリを吊り下げてみると納得できるはずです。先調子なら穂先の部分で曲がります。胴調子では2番から3番で曲がるでしょう。その部分を竿の「腰」と呼びます(腰については諸説あります)。
チヌ釣りに胴調子が必要な理由は、より細いハリスを使いたいからです。いまだに、チヌはハリスが細くないと食わないと信じている人が多く、技術の進化でハリスも道糸も以前よりはるかに強くなっているのもあって、グレ釣りに比べて細いハリスを使うことが常識となっています。
軟らかい竿を使うのも同じ理由です。磯竿の号数はどの程度のオモリが使えるかどうかで設定しています。メーカーによって多少バラつきがあるのですが、およそ1号竿は2~3号オモリ、1.5~2号だと3~5号のオモリが使えます。5号竿に1号オモリでは少ししか曲がりません。1号の竿に5号のオモリを使うと曲がりすぎて仕掛けの投入もままならないのです。
胴調子&軟竿を使うもう一つの理由はチヌの引きを楽しむ点にあります。チヌは泳ぐのがあまり得意ではなく、しかも少しばかり糸を送ってもバラす心配はありません。そこで、せっかくハリ掛かりしたチヌの引きを楽しむためゆっくりやり取りするのです。ベテランが0号の竿を愛用するのはそれが理由です。もっとも、小アジやベラが掛かっても大きく曲がりますから、少しばかり面倒です。
万能竿でも問題はありません
総じて竿は高価なものです。釣り道具の中ではトップクラスといってもいいでしょう。そして、一流メーカーのチヌ竿、グレ竿は数万円というのが標準で、改めて購入しようとするとかなりの負担になります。しかし、ビギナーにはビギナー向きの打ってつけの竿があります。それが万能竿です。万能竿とはその名のように、サビキ釣りからウキ釣り、穴釣り、チョイ投げ釣り、さらにはルアー釣り、エギングにも使える竿です。専用竿に比べると機能は劣りますが、これ一本でさまざまな釣りができるのですから非常に有難い竿です。
では、この万能竿でチヌ釣りは不可能でしょうか? 前述したように、ウキ釣りは可能です。なんら問題はないとボクは思います。号数に換算すると、万能竿は1.5号前後でしょうか。オモリ負荷は3~5号ですから、10~20gのウキを使えばいいことになります(1号オモリの重量は3.75g)。自重20gのウキは多くはありませんが、10gなら珍しくありません。どっしりした10gのウキを使えば万能竿でも操作しやすいはずです。
そんな大きいウキを使えばチヌのアタリが取れないなんていわないでください。波止チヌ釣りのウキに感度など必要ありません。ハリを完全に飲み込むまで送り込めばいいのですから、自重10gでも問題はないのです(エサ盗りの小さいアタリを取りたい場合は別ですが)。
残念ながら、チヌの引きを楽しみたいという目的には適していません。硬いから竿を立てているだけでチヌは浮いてくるでしょう。もっとも、その点についてもビギナー向きといえるでしょう。魚が勝手に浮いてくるのだから、釣り人にとっては楽なはずです。
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